深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11. 昔懐かしふるさとの味

11-42. アケビ

 あさぎり町深田の出身で、現在、岐阜県在住の五島さんは「アケビ」や「ムベ」の味が懐かしいと、その季節になると、会合の場に持ち込みみんなに食べさせてくれる。アケビは、筆者も懐かしい思い出はあるが、少し専門的な仕事をする中で腑に落ちず引っかかっていることがある。

 図1はアケビの茎(くき)断面、そして図2は横断面の顕微鏡組織である。アケビの茎の特徴は、このように、放射状組織であり、空孔(髄空)があり、そしてねじれ(ワインデイング)ていることである。空孔(髄空)があるためなのか、アケビは別名「木通:もくつう」とも言う。このような細胞組織は、工学的に、軽くて丈夫な構造である。

茎断面   茎横断面
図1. 茎断面の顕微鏡組織   図2. 茎横断面の顕微鏡組織

 筆者が、長年引っかかっていた事というのは、このように強靭な構造の茎なのに、なぜ樹木に巻き付いて成長していくのかである。なぜ自立で成長できないのか、杉や檜や竹のように、なぜ一本立ちできないのか、であった。 改めてアケビの生態を探っていたら「茎は蔓(かずら)になって他物に巻き付き、古くなると木質化する」とあった。この「木質化」とは、木と同じ性質になるということ、つまり、細胞壁にリグニンという一種の接着剤が沈着して、組織が堅く強靭になることである。先述のように、アケビは空孔(髄空)があり、軽くて柔らかい。隙間をリグニンが埋め、細胞の隙間がなくなり硬くなるわけである。木質化はアケビの最終目的であり、幼茎の段階ではなし得ないために、大木に巻き付き、他力で成長しているのだと、あまり科学的ではないが、一応納得、腑に落ちた。

アケビの葉 アケビ ムベ
図3. アケビの五葉 図4. アケビの実 図5. ムベ

 図3は、周知のアケビの葉(五葉)、図4は熟する前後のアケビの実である。読者も、口の中で長い間もぐもぐして種を吐き出すことをされた記憶があると思う。
「アケビ」の名前の由来であるが、パカッと口を開けた実の様子を表わした「開け実」が転じたもの。一方の、アケビに似た「ムベ」は(図5)の如く、熟しても実は開かないが、名前の由来は、老夫婦が出会った天智天皇の故事に来する。近江の地に出かけた天皇が、長い生きしている老夫婦から、果実を受け取り食された時、「宜(むべ)なるかな:もっともなことだ」と語られた事から、「ムベ」が果実の名になったものと言われている。そのことから、今年(2019年)も、滋賀県近江八幡市の神社から「ムベ」が皇室に献上された。別名「ウベ」とも言う。
図3:六甲山系の樹木図鑑、図4:コトバンクから引用した。図5は昨年10月の相良での収穫。




(編者追記)
アケビとムベ
   その昔、小学校の「運動会」は、10月の日曜日にが行われていて、翌日は代休。その日は、夫婦岩(みょうといわ)から右手の山に入って、以前に目を付けていた木(と言っても、カズラみたいな)に登って、アケビを採ったものだが、先客の鳥に実をついばまれていて、中身が無かったり、半分だったりということもあった。アケビは9月半ば頃から、ムベは10月からなので、同時に両方ということで、10月に山に入っていたのを思い出した。
 もう一つ、大阪の枚方市に移り住んだ30年以上も前のこと、近くでアケビを見つけて、近所の方にお裾分けをした翌日。「あんなに苦いものが美味しいの?」「えっ?どんな食べ方をしたの?」と聞いたら、「種の部分を全部捨てて、紫の皮を剥いて食べた」とのこと。「アチャ~!」

写真:「道の駅 錦」で売っていた今年最終入荷のアケビとムベ(2019/10/14撮影)




アケビ   (編者追記-2)
今朝(11/18)、自宅周りの側溝に溜まっていた落ち葉掃除をした。
その落ち葉を捨てに、竹やぶの傍に行ったら、目の前に赤いものがある。
「え~っ?アケビなん?」
11月下旬なので、肝心の中身は無くて、皮だけでしたが…。
でも、アケビが有ることが判ったので、来年の10月に期待したい!

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